January 22, 2021

「ああ、悪かったな。

「ああ、悪かったな。兵士達はどんな具合だ?」「特にこれと言った事は有りはせんが。」「ふむ。ところで、成り行きで王女を守らなければならなくなりそうだ。つまり、ステルポイジャン達と敵対する事になりそうなんだが・・・。」ハンベエはちょっと気まずそうに語尾を濁した。成り註冊公司行きじゃから、何処までもハンベエに付いて行くぞ。」ドルバスはあっさりと答えた。その一言にハンベエはホッと胸を撫で下ろす思いだった。ドルバスと顔を合わせる迄は、どうやって説得しようかとアレコレ思案を重ねて来たハンベエであったが、ドルバスの呆気ない同心でそれらは全て無駄になってしまった。逆にあんまりあっさりドルバスが協力を申し出たので、返って不安がもたげて来るほどだ。「そんなに簡単に決めていいのか? 敵は半端無く強大だぜ。」ハンベエの口から、逆にドルバスへの反問が出てしまった。「じゃあ、俺がステルポイジャンの側に奔っていいんかい?」「え?・・・。」「どの道、この俺はハンベエに付いて行くと決めとるんぞ。今更、考える事は無い。今までだって、楽な相手はいなかったぞ。今回も同じってだけじゃろう。好きでハンベエに付いて行くんじゃ、死んでも別に文句言わんから安心しろ。」「すまん。」ハンベエは静かに言った。全く、ドルバスって奴はトコトン頼りになる奴だ。「じゃが、この後どうするつもりじゃ。直ぐにも、ステルポイジャン達との決戦準備を進めるのか?」「うーん、王女がどう言うか分からん。しかし、手を拱いているわけにもいかんしな。と言って、旗頭がやって来ないには兵士達も付いて来ないだろう。」「ハンベエも色々と心労じゃのう。それはそうと、兵士達に今月の給料払ってないんじゃが・・・。」「給料?・・・払う?」「ああ、ハンベエは知らんよなあ。実はタゴロローム守備軍の給料はタゴロロームにある王国金庫の国庫金から金を引き出さなければ払えんのじゃが、守備軍司令官が誰だか分からんような状況では金は渡せんと言うんじゃ。」「王国金庫?・・・。」ハンベエはドルバスの言葉に暫く考え込んでいたが、やがてポツリと言った。「現在守備軍が所持している金は幾ら有る?」「ん?・・・俺がこっちに来てから確かめたところでは、守備軍の金庫には金貨一万枚ほどしかない。」「給料って云うのは払わないと・・・やっぱりマズイよな。」「流石にまずいだろう。」「・・・どうにも仕組みが分からなくて頭が痛いな。・・・が、ハナハナ山から持ってきた金貨がまだ5万枚近くそのままだ。取り敢えず、それで何とかしておいてくれ。」はてさて、説明が必要であろう。この時代、軍隊は普通は徴税機能も併せ持っており、ゴロデリア王国においてもゴルゾーラのボルマンスク守備軍やフィルハンドラの南方守備軍は税金の管理を自前で行っていた。 管轄として支配を任された地域から集めた税金から軍隊に必要な金を差し引き、残りをゲッソリナ行政府に上納していたのである。ところが、タゴロローム守備軍についてはゲッソリナ行政府の直接管轄地域として、徴税管理は王国金庫と呼ばれる出先機関が行い、守備軍の必要経費はそこから支給されていたのである。ハンベエは師フデンの薫陶の中で、個人的武技として剣術、槍術、馬術、そしてその延長線上で陣立て、集団戦についてまで何と無く教えを受け、ある程度の知識を持っていた。しかし、殊(こと)金の話になるとスッポリと頭から抜け落ちていた。確かに、山を降りて来てロキに出会い、その後タゴロローム守備軍での軍隊生活を経て、戦争における金の重要性を認識し、前回はバンケルクの隠匿資金を奪ってまで戦費を整えようとまでした。だが、元来金銭に無頓着な若者なのである。

 

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January 20, 2021

ステルポイジャンは別に

ステルポイジャンは別にハンベエにお愛想を言ってるでもなく、淡々と言った。ほうっ、とハンベエの中で俄かにステルポイジャンの人物像が大きくなりつつあった。「ふーん、偉く物分かりのいい言い分だな。生髮藥」ハンベエは、信じられぬなあという具合に首を捻りながら言った。「信じられぬという顔をしておるな。しかし、わしに他の思惑があるわけではないぞ。ともあれ、コーデリアスの仇を報じてくれた事は改めて礼を申す。」(事前に思っていたのとは随分違う人物のような気がして来たな。いや待て、この俺を誑かそうとしているのかも知れない。俺も人の腹の内が簡単に分かるほど甲羅を経ちゃいねえ。油断するまい。)ハンベエは胸の内でこう唱えて、反って警戒心を強めた。「別に礼を言われる筋でもないさ。バンケルクについちゃあ、この俺が気に入らないから、ぶっ潰しただけの事。」「ほう、何かあったのか?」「何かも何も、最初からいけ好かねえ野郎だった。王女の推薦状を持って行ったこの俺を、あろう事かヒラの兵士にしやがった。随分な扱いだ。その後は、例のアルハインドとの戦いで捨て石にされて殺される処だった。まあ、最初から奴と俺とは殺し合う運命にあったんだろうよ。」「ふむ。士は己を知る者のために死し、女は己を喜ぶ者のためにカタチづくると聞く。その方を見誤ったのはバンケルクが将器で無かったという事だな。ところで、その方わしに何か話があるという事だったな。」相変わらずステルポイジャンは淡々と言った。そのずっしりと重そうな太鼓腹に似て酷く重厚な人柄を匂わせていた。「そうだったな。先ず第一に、あんたんとこの兵士達の無礼に文句を言いに来たのさ。いきなり人の部屋にやって来て『王女は何処だ。』って部屋ん中を荒ら探ししようとしやがった。それも二度もだ。どういう教育してやがるんだ。」とハンベエは言った。半ばゴロツキの因縁じみていると自分自身感じながら。「それは生憎だったな。しかし、当方も国王を毒殺した王女を捕えんがための重大な任務、事の軽重を弁えて、質の悪い言いがかりを付けないでもらいたいものだ。」またもや、ニーバルが横から言った。ハンベエは今度は体全体をニーバルに向け直して、ジロリと睨み付けた。その様子は部屋の空気を凍らせるのに十分なほどの曰く言い難い迫力を伴ったものであった。ニーバルはハンベエに殺気を感じたものか、半ば腰の剣に手を懸けそうになって、危うく止めた。「部下の非礼で気分を害したようで済まぬ。わしが詫びる。」ニーバルを無視して、ステルポイジャンが軽く頭を下げた。嫌にハンベエに対して、好意的である。ハンベエ少々気持ちが悪くなっている。「そうあっさりと詫びを入れられてはこっちが恐縮ものだな。いいぜ、忘れる事としよう。」ハンベエは勿体をつけて言った。「ふむ。腹の虫を収めてもらったところで、改めて尋ねる。ハンベエその方、本当にエレナ姫の行方を知らぬのか?」ずいっと身を乗り出し、ハンベエのマナコの奥底まで覗き込むようにしてステルポイジャンが聞いて来た。「残念だが知らん。お前さん方が俺と王女の間をどう思っているのか知らないが、最近じゃあ仲良しってわけじゃなかったからなあ。」ハンベエは自嘲気味に言った。「どういう事だ?」「バンケルクは元々王女の剣の師、それに最近じゃあ、バンケルクが王女に求婚していたらしい。」「・・・ほう。」「王女はバンケルクの奴をイイナズケと呼んだ。それどころか、俺が奴を討とうと出撃する時には剣を抜いて挑んで来やがった。」「・・・」「まあ、何せ相手は王女だ。斬り殺すわけにもいかないから、適当にあしらって気絶させたがな。」「王女はかなりの使い手と聞いたが、それを適当にあしらったとは本当か?俄かには信じられぬ話だ。」さて、今回も横からニーバルが口を挟んだ。ハンベエはもうそちらを見ようともせず、ステルポイジャンを真っ直ぐに見つめたまま話を続けた。ステルポイジャンはハンベエを穴のあくほど見つめていたが、腕組みをして深く考えこんだ。ハンベエの一言、一言を注意深く吟味するかのように。

 

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January 18, 2021

最初からバンケルクはハンベエを抹殺し

最初からバンケルクはハンベエを抹殺しようとしていたし、ハンベエも又バンケルク達と妥協する積もりは欠片も無かった。今となっては両者はどちらも引くに引けない処まで来ているのである。コーデリアスも死んだ。その側近も死んだ、ゴンザロも。そもそも、避孕藥副作用バンケルクの無慈悲な作戦のために、何人の兵士が怨みを抱いて死んだと思っているのか。今更、どのツラ下げて止められるか。(例えバンケルクを倒したところで、死んだ者は生き返らない?・・・ふん、百も承知だ。バンケルクを殺すのは本当に正しい事なのか、それが正義と言えるのか?・・・俺は正義の味方じゃねえ、知った事か。)エレナのすがるような瞳を見つめながら、ハンベエの胸には様々な思いが去来していた。だが、やはり出て来る結論は、(今更、何も言う事はない。何がどうあろうと、奴とは決着を付けなければ収まらん。)という思いであった。そうは言っても、その言葉を叩きつけるには、エレナはあまりにも可憐すぎる乙女であった。 心が優しいのであろう、聡明なのであろう。既にバンケルクが心術清らかな人間でない事も気付いていよう。にも拘らず、この期に及んでバンケルクを見捨てる事なく、庇おうとするエレナの心根をハンベエは美しいものと感じていた。ハンベエはエレナの問いに答えなかった。答えられなかった。イザベラはとみると、この魔性の女が、愛しい妹でも心配しているかのような哀切な目でエレナを見やっていた。「返事はできないな。」辛うじて、ハンベエはそう言って天幕を出た。エレナももう何も言わず、ハンベエの背中をぼんやりと見送った。エレナやロキ達はその夜、ハナハナ山陣地に逗留した。ハンベエが命じて、急増の仮設小屋を造らせ、そこに一行を逗留させたのである。早朝、ハンベエがエレナを訪ねて来た。ハンベエは言った。「悪いが、やはり俺はバンケルクを殺す。駆け込んできた兵士の話では、バンケルクが俺達を討伐するためにタゴロロームを出発したという事だ。此処まで来たら、王女がなんと言おうと、俺には迎え討つ以外の道はない。」ハンベエは投げ捨てるように言った。これを聞いたエレナは、もう驚く様子もなく、「将軍の方から・・・仕方のない事なのですね。」と呟いた。諦めたのか、何かを悟ったのか、非常に冷静な物腰である。が、しかし、その次にエレナの口から出た言葉は驚くべきものであった。「ハンベエさん、あなたに決闘を申込みます。」『決闘を申し込みます。』と言ったエレナの顔をハンベエはまじまじと見た。静まった湖水の面(おもて)のように澄み切った目をしていた。表情は穏やかであるが、いつもの柔らかな笑みはない。その顔から読み取れるのは悲壮な決意である。一晩眠って何を思った事であろうか。こんな場面に直面したら、ロキが真っ青になってすっ飛んで来て、「ダメだよお。ハンベエ、まさか王女様を斬ろうなんて考えるやしないよねえっ」とばかりに二人の間に割り込んで大騒ぎしそうなものであるが、生憎とこの場には居なかった。 はて、山に芝刈りに行ったものか、それとも川に洗濯に行ったのか。この王女とハンベエの一大事にロキは何処に行ってしまったのだろう。実は、兵隊達に頼まれて手紙を書いていたのだ。ハンベエはハナハナ山に到着し、ようやく落ち着いた昨日、ゲッソリナに使者を送ろうとしていた。無論、任地に到着した報告である。そう、ハンベエ、ついさっきまではハナハナ山に陣を構え、一応宰相命令に従い、この地に駐屯して情勢の変化を窺うつもりになっていたのだ。エレナの言葉にハンベエも、真一文字にバンケルクを討ち果たすべきか迷ったのであった。それ故、ゲッソリナに報告の使者を送るなどという、タゴロローム守備軍の動静を知る者にとっては悠長とも思える行動を取ろうとしていたのである。ロキは以前、タゴロロームの兵隊達から口銭をとって手紙の代筆をしていた。それで、ゲッソリナへの使者に手紙を言付けたいと考えた兵士が、今回ロキがやって来た事を知り、これ幸いと代筆を頼みにやって来たのである。

Posted by: Watts23 at 10:59 AM | Comments (1) | Add Comment
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